授業を聞いても大切なことを聞かせても、理解できずにとんでもないことをしてしまう子どもたちがいます。ふざけているのでも注意力散漫でもなく、ワーキングメモリが少ないためかもしれません。
授業を聞いてもわからない子どもたち
学校の授業が全く頭に入らない子どもがいます。
教える側からすると、何回説明してもわからない、注意力散漫な、あるいは、ちゃんと聞くことができない、ちょっとやっかいな子どもです。
こちらもついつい、
「さっきも説明したよね?」
「ちゃんと聞いていなさい。」
「何回目かな?」と、語気を強めてしまいがちです。
しかし、これには理由があります。彼らは聴力情報が入りにくいのです。
聴覚による言語性ワーキングメモリ
例えば
「教科書の5ページを開いて、問1と問2の計算をしたら見せに来てください。」と指示を出したとします。
その指示を聞いた子どもたちは、
①言葉を聞き取り
②教科書を開いて問題1と2を確認し
③問題を読みます。
この一連の動作ができて、初めて問題を解くこと、書くことができます。
簡単なようですが、「聴覚による言語性ワーキングメモリ」がうまく機能しない子どもにとってはとても難しいのです。
そういう子供たちは「教科書の5ページ」までしか聞き取れない。または、5ページや問題1・2などの数字がごちゃごちゃになってしまうこともあります。
耳から聞き取る能力が弱いからです。
この例には、情報を細かいチャンクに分けて対処します。
1つの文を短くする。
全員が理解できたかを確認する。
隣同士で確かめ合う。
などです。そうするとわかるようにはなります。
確かに、集団全体でその習慣がつけば、みんながイライラすることもありません。
その子にとっても幸せです。
また、情報が全体の周知となるため、他の子どもの不注意を防ぐという、相乗効果もあるでしょう。
しかし、それだけいいのかなと、常々思っていました。
その子の置かれた環境が変わったとき、また、配慮ができない人のもとで学んだり働いたりしなくてはならないとき、うまくやっていけるのか。
もちろん、配慮も大切です。同時にその子自体のワーキングメモリを増やしていく手だても必要ではないかと思うのです。
解決に向けて
速読聴の効果
弊社では「速読聴:そくどくちょう」を取り入れています。
本は、国語のプロが選んだ良書を、子どもの語彙習得レベルに合わせたグレード別にしています。読書速度は音読と黙読の速度を計測したうえで設定します。
それだけでなく、その本に出てくる語彙や言い回しも学んでいきます。
環境と動機付けで読書は好きになれる
今の子どもたちは本を読まないと言われますが、環境を整え動機を与えていけば大概の子どもは読書を楽しみます。
以前、講談社とタイアップしてイベントをしました。
100人超の子どもたちが参加してくれました。本はあまり読まない子が多かったのですが、全員飽きることなく本に熱中していました。
「普段読まない子こそ熱中する」とは、講談社の方の言葉です。的を得ていますね。
そうなんですよね、読まないのは読むきっかけがないだけなのです。
速読聴で読書スピードアップ
速読聴の良さには、読書のスピードアップもあります。
速読聴では、能力に合わせてスピードを上げていくことができます。
小学校中学年で音読と黙読のスピードが逆転します。低学年のうちは音読スビートが勝りますが、高学年ではかえって音読が遅くなる。この転換がうまくいかないと、いつまでも音読をしたがる。すると、読むスビートが遅くなります。
読むスピードが遅いとは、同じ時間内での情報取得量が少ないということです。
情報を受け取る量が少なければ、情報のアウトプットも影響を受けます。
これがぞれだけ重大な問題かお分かりいただけますでしょうか。
現在、中学生・高校生で文章を読むことが遅い生徒が増えています。
2000字程度の文章を読むのに10分近くかかることもあるのです。”読んだだけ”で、意味が分かっていないことも多い。
遅いうえに情報が理解できていないのです。
速読聴のシステムは、これらを改善していくことができます。
読書嫌いや、文字認識が苦手なお子さんも通ってくるようになりました。
コグトレでトレーニング
先日は、コグトレの聞いて覚える練習も取り入れてみました。
「聴覚による言語性ワーキングメモリ」のためのトレーニングです。
すると、思わぬ副次効果があったのです。
あるお子さんでは「きって」「きっぷ」などの小さなつである促音:そくおんを上手く読み書きできないことがわかりました。このパターンはちゃ・ちゅなどの拗音も苦手とします。これらも聞いて書く力を削いでいたのでした。
こういうことは早めに気づいて直してあげないと、中学生になっても後をひきます。
また、日本語のベースであるひらがながきちんと読めないため、漢字にも影響でます。拗促音を含んだ漢字が読めないのです。
どの言語でもそうですが、文字は読めてこそ意味を理解できます。
まず、読むことができるようにしなくてはならないですね。
早速保護者に伝え、ご家庭でも意識して発話していくようにと教えました。
家庭学習用プリントも用意しています。
こうやって一つ一つ子供たちの能力を伸ばしていくことが私たちのやるべきことだと思っています。
まとめ
聞き取れない、何回も繰り返して尋ねる子どもは、「聴覚による言語性ワーキングメモリ」が弱いかもしれません。
早いうちに気づき適切な処置をしてあげることで、メモリをあげていくことができます。